1,歴史 | エーテル アインシュタインの相対性理論 |
2,ローレンツ | ローレンツ変換1 ローレンツ因子 ローレンツ変換2 逆変換 |
3,相対的効果 | 双子のパラドックス ドップラー効果 エネルギーに関する式 ローレンツ収縮 |
4,4次元空間 | ミンコフスキー空間 ローレンツ変換3 固有時 |
5,相対的力学 | 4元速度 4元力 運動方程式 |
相対性理論は、今までの3次元的な考え方に時間軸を加えた4次元的な理論です。
これは、ニュートン力学では絶対的であった時間というものが実は
相対的なものであるということと、光速は常にcであるということが基本です。
20世紀はじめ、音は空気、地震は地面を媒体として振動が伝わっていくということは
説明できたのですが、光や電波はどのように伝わっていくのかわかりませんでした。
当時は力学が絶対であったため、エーテルというものが考え出されてしまいました。
しかし、実験や理論を考えていくうちにおかしなことになりました。
例えば、地球などの惑星はエーテルによって公転運動が衰えてしまい太陽に
落ち込んでしまうのではないかといったことなど矛盾か生じてしまいました。
そこで、エーテルは運動に影響することもなく、検出できないということになってしまいます。
現実に検出できないものを考えても仕方がないので、
現在はエーテルは存在しないということになりました。
後にアインシュタインの登場によってそれらの現象はアインシュタインの理論で
説明できるようになります。特殊相対論の世界はほとんど彼一人によって骨格ができました。
アインシュタインは次のことを唱えました。
1,すべての慣性系は、すべての物理法則に対して等価
2,光速は、すべての慣性系で光源によらず一定
1は、力学的な物理法則だけではなく、
電磁気にまで拡張した点が画期的だといえます。
2は、例えば、速度vで走っている乗り物から発した光の速さは
c−vではなくcであるというものです。
もし、エーテルによる影響で同一の光が経路SとTで光の波の方程式
y=Asin(ωt+θ) ω:角速度 θ:初期位相
が一致しないと、おのおのの光を干渉させたときに変化が生じるはずですが
マイケルソン・モーレーの実験では変化は観測されませんでした。
そこで、すべての系では光速はすべてcであるということになりました。
z z' l l l l → l l l lK'系 → K系 l----------x l------------x' → / / → / / / / → y y'
ある慣性系Kの座標を(x,y,z)、別の慣性系K’の座標を(x’,y’,z’)とします。
慣性系K’のx'軸,y'軸,z'軸の向きはKのx軸,y軸,z軸に並行でx軸の方向に
vの速度で運動しています。
K’とKの原点が一致した瞬間に原点で光が発光した場合光面は
x 2+y 2+z 2−(ct )2=0 x'2+y'2+z'2−(ct')2=0 x'=A(x−vt) y'=y z'=z t'=Bt+c
これについて解くと
x'=γ(x−vt) y'=y z'=z t'=γ(t−vx/c2)
というローレンツ変換の式がでてきます。ただし、γは、
γ= 1 c:光速 /1− v2\1/2 v:相手座標の速度 \ c2/ γ:ローレンツ因子 = 1 β:β=v/c (1− β2)1/2
という関係があります。このγをローレンツ因子といいます。
γ= 1 c:光速 /1− v2\1/2 v:相手座標の速度 \ c2/ γ:ローレンツ因子
先ほども登場しましたが、これがローレンツ因子です。
日常では、γ=1なのですが、vが光速に近くなるとγ>1となって
日常ではあり得ない現象が起きます。
また、v>cになってしまう(vが光速より早い)と、
γ<0になりおかしなことになります。
ローレンツ因子をつかって次の相対量がわかります。
(大文字は、変換後 小文字は変換前)
m=γmo γ:ローレンツ因子 p=γmou u:速度 X=γ(x−vt) x,X:座標 x=γ(X+vT) t,T:時間 T=γ/t− vx\ v:相手座標の速度 \ c2/ c:光速 t=γ/T+ vX\ \ c2/
最初の式から、v→cになると重くなることがわかります。
2番目の式から、v→cになると長さが短くなることがわかります。
4番目の式から、v→cになると時間が短くなることがわかります。
(いずれも、相手座標について 相対的なもの)
これより、運動量やエネルギーのmを置き換える必要があります。
先ほど、座標位置に関するローレンツ変換を説明したのですが
それをその慣性系の時間で微分することによって速度が求まります。
具体的には、
ux’=dx’=γd(x(t)−vt)=γd(x(t)−vt) dt dt’ dt’ dt dt’ =γ(ux−v)dt dt’ t=γ(t’+vx’/c2) なので dt =γ/1+v dx’\=γ/1+v ux’\ dt’ \ c2dt’/ \ c2 / ux’=γ2(ux−v)(1+ux’v/c2) ux’について解くと ux’= ux−v 1−vux/c2 今度はuyについて考える uy’=dy’=dy’dt =uyγ/1+v ux’\ dt’ dt dt’ \ c2 / = uy/γ 1−vux/c2 uzについてはuyと同様
以上をまとめると
ux′= ux−v 1−vux/c2 uy′= uy/γ 1−vux/c2 uz′= uz/γ 1−vux/c2
問題 s系から見てx方向に速度c/2で運動しているS′系がある。 また、S′系から見て、x方向に速度c/2で運動しているPがある。 S系から見たPの速度を求めよ。 誤解答例 c/2+c/2=c 解答 先ほどの公式を用いると、 ux′= c/2+c/2 = c =4c 1+c/2・c/2 1+1/4 5 c2
今まで、S系からS’系の変換をあらわす式を中心にやってきたのですが
もし、反対の立場で考える場合を紹介します。
x’=γ(x −vt) y’=y z’=z
これをS’の方を中心に考えると
x =γ(x’+vt’) y=y’ z=z’
時間の変換式は
t’=γ/t− vx\ \ c2/
でした、これを反対に考えると
t=γ/t’+ vx’\ \ c2 /
先ほどの式は
ux’= ux−v 1−vux/c2
でした。これを変形すると
ux= ux'+v 1+vux'/c2
時間のローレンツ変換では、自分の系の時間と比べて、
運動している系の時間は遅れるという法則があります。
今、地球上に双子の兄と弟がいました。兄は、地球から高速に近い速度で
遠ざかってUターンして戻りました。弟は、地球上にいたままです。
このとき弟から兄を見ると、兄は光速に近い運動をしているので
時間がゆっくり流れるので兄が弟より若くなる。
一方兄から弟を見ると、弟は地球とともに自分から見て光速に近い運動をしているので
時間がゆっくり流れるので弟が兄よりもっと若くなる。
このようにして矛盾が生じる。
実際には兄が弟より若くなります。
これは、兄の方は慣性系ではなく、加速度運動をしているからです。
物理法則は、すべての慣性系において等価なのであって加速運動を
している系には成り立ちません。
光のドップラー効果の式は次の通りです。
ν’=ν/1−v/c\1/2 \1+v/c/
特に v<<cのときは
ν’=ν(1−v/c)
量子力学のところでもでてきましたが、次の公式は重要です。
E2=m2c4 + p2c2
p:運動量 m:質量 E:エネルギー
もし静止している物体の場合、p=0なので、有名な公式
E=mc2
という公式がでてきます。ニュートン力学の運動エネルギーというものは
運動している物体のエネルギーから静止エネルギーを引いたものです。
T=E−mc2 =γmc2−mc2 =(γ−1)mc2 ここで、γについてvをv=0の周りでテーラー展開すると γ=1+ 0 v+ 1v2+・・・・・ 1! 2!c2 (γ−1)mc2=1mv2 2
問題 静止したπ中間子がμ中間子をニュートリノに崩壊するとき μ中間子の運動エネルギーと運動量を求めよ ただし、ニュートリノの質量は0で、 μ中間子の静止エネルギーMc2は106MeV π中間子の静止エネルギーmc2は140MeVです。 解答 1,まず運動量保存則を考えます。静止しているものが2つに分かれるので Pμ+Pν=0 pμ:μ粒子の運動量 Pν:ニュートリノの運動量 2,エネルギー保存則で、 m:μ中間子の質量 M:π中間子の質量 とすると、 Mc2=Eμ+Eν 3,これらを考慮すると、 Eμ2−Eν2=(pμc)2−(pνc)2+m2c4 =(Eμ+Eν)(Eμ−Eν) ∵Eμ−Eν=m2c4=m2c2 Mc2 M Eμ=1/m2c2+Mc2\=1/1062+140\ 2\ M / 2\140 / =110.1MeV pμ=(Eμ2−m2c4)1/2=29.8[MeV/c] c
慣性座標系Sで棒の両端の座標をX1,X2とすると
棒の長さはl=X2−X1になります。
一方別の座標系S’では、棒の長さはl’=X2’−X1’になっていて
l’=l/γ
という関係があります。つまり、棒が収縮して見えるのです。
3次元空間に時間軸を加えたものを4次元時空といいます。
ある時間にある場所で何か物理的な現象が起きたとき、
4次元時空間内のある一点で表せます。
その点を世界点といいます。また、その粒子が運動することによって
4次元時空にかかれた軌跡を世界線といいます。
2つの世界点の距離が
s2=x2+y2+z2−c2t2
で与えられる空間をミンコフスキー空間といいます。
さらに、s2の値により次のように呼びます。
s2=0 光的 ヌル的 s2>0 時間的 特に t>0 未来圏 t<0 過去圏 s2<0 空間的
これらは、光円錐によって説明されることがよくあります。
以前説明したローレンツ変換は、実は時間と空間の回転であるということになります。
そして、次のように行列であらわすことができます。
/ γ 0 0 γiβ\ / x \ / x’ \ | 0 1 0 0 || y |=| y’ | | 0 0 1 0 || z | | z’ | \−γiβ 0 0 γ / \ict/ \ict'/ ただし、β=v/c
このとき、ローレンツ変換の行列式は1になっています。
固有時とは、運動している物体上の系で計った時間のことです。通常、τを用います。
dτ=dt/γ
4元速度ωiは、次のように定義されています。
速度ベクトルuのx,y,zの成分をux,uy,uzとすると ω1=γ ux ω2=γ uy ω3=γ uz ω4=γ ic
4元力fiは、次のように定義されています。
3次元的力ベクトルFのx,y,zの成分をFx,Fy,Fzとすると f1=γ Fx f2=γ Fy f3=γ Fz f4=γ iF・u c
3次元の力学上での運動方程式は、
mx"=F
でした。これを少し変形させると4次元でも使えます。
modωi=fi ωi:4元速度 dτ fi:4元力