1,量子の基礎 | はじまり 量子で用いる変数 エネルギー 運動量 量子条件 |
2,数学 | 演算子 交換子 内積 超関数 固有値 Lie代数 |
3,シュレディンガー | ψとφ Sch.eg. 不確定性原理 |
4,相対論との関連 | エネルギー公式 |
量子は、物質のエネルギーの値が連続ではなく
とびとびの値を持つというものです。
この考え方は、19世紀終わりから20世紀はじめに誕生しました。
現代物理の最先端の一つでもあります。
ここでは高校物理から大学にかけての基礎的な量子の解説をします。
量子力学は、鉄などを熱したときなぜ赤く光るのかということを
説明しようとしたことから誕生しました。
これは、鉄の電子の軌道がとびとびの位置でないと安定しないため
電子の軌道が移るときに物質によって固有の波長を出します。
量子の世界では、粒子と波が明確に分かれていなく、
粒子が波の性質を持ったり、波が粒子の性質を持つということがおきます。
例えば、下図のような装置で電子がスリット(2つあります)を通って
測定器で電子が観測される場合を考えます。
通常、電子はスリットの真後ろにある測定器でのみ観測されることが
予測されますが、実際は図のようになります。(*が観測された電子)
───────────┬───────────┐ │ *│ ┴ ***│測 ┬ *│ │ **│定 電子 ・→ │ ****│ │ **│器 ┴ *│ ┬ ***│ │ *│ ───────────┴───────────┘
この現象は波であると考えると「干渉」という考え方で説明できます。
そこで、電子の粒子性という考え方がでてきます。
反対に、波が粒子の性質を持つことがあります。例えば光などです。
光は電磁波と考えらていたのですが、粒子の性質があることがわかりました。
(光の粒子性)
これは、コンプトン効果などで観測されています。
これらのことを説明しようとして誕生したのが量子力学です。
kは波数というもので、距離2πに波がいくつあるかというものです。
このkを用いた次の公式があります。
kλ=2π
hはプランク乗数といわれています。値は6.6×10-34です。
この値は非常に小さくh=0にするとエネルギーが連続になり昔の力学になります。
h=h/2π
と定義したものも多用します。
エネルギーは
E=hν=hω
また、光は粒子性があるので光子として考えるとエネルギーは
E=cp p:光子の運動量
運動量はエネルギーの式から次のように求まります。
p=hω=hk c =h λ:ド・ブロイの波長 λ
問題 100Vで加速された電子のド・ブロイ波長を求めよ 解答 E=100e=p2 2m これより p=200me λ=h= h =1.23×10-9[m] p 200me
L=mrv=hn r:電子の軌道半径 v:電子の速度 n:自然数 L:角運動量
これが、量子条件というものです。
電子が陽子の周りを単なる円軌道をしているとすると
電磁波が発生してしまい、エネルギーは失われてしまいます。
すると電子が陽子に落っこちるというおかしな現象がおきます。
そこで定在波で存在しているとすればうまく説明できます。
そのための条件が上式です。
ここでは、量子力学で用いる数学を中心に解説します。
今まで、変数は実数や複素数という値を持ちました。
それに対し、∂(ナブラ)という微分記号や行列を変数のように表したのを演算子といいます。
演算子は変数に似ています。
しかし、かける順番を換えると値が違ってしまう(後述の「交換しない」)など
変数にはない特徴があります。(行列に似ている?)
B=At
であるとき、演算子BがAの エルミット共役の演算子 であるといいます。また、
B=−At
であるとき、演算子BがAの 反エルミット共役の演算子 であるといいます。
A B=B A=1 1:単位行列
が成り立っているときBはAのユニタリー演算子であるといいます。
これにも反ユニタリー演算子というものがあります。
B= A-1 B:Aのユニタリー演算子 C=−A-1 C:Aの反ユニタリー演算子
演算子AとBを[A,B]のように書くことがあります。定義は
[A,B]=AB−BA
です。そして以下の性質があります。
[A,A]=0 [a,A]=0 a:定数 [AB,C]=A[B,C]+[A,C]B [A,BC]=[A,B]C+B[A,C] [A,B]t=−[At,Bt]
もし、[A,B]=0なら、AとBは可換であるとか 交換するといいます。
問題 [x,p]を解け 解答 pは量子化条件から p=−ih∇ なので −xih∇ + ih∇x =ih
内積の詳細は「応用数学概説」の「直交関数」の項目をご覧ください。
関数φとψの内積は(φ,ψ)のように記述し次の関係があります。
(ψ,φ)=∫dr ψ* φ
(ψ,φ)=(φ,ψ)*
ここでψ*はψの複素共役を意味します。
最初の式で注意すべきは内積の最初の関数の共役を用いることです。
そして次の式では、内積の順番を入れ替えると
全体の共役に等しいということを表しています。
もし両関数ともψだと内積の結果は規格化の式になります。
エルミット演算子には線形性があるので
(aA+bB)=a* At + b* Bt a,b:複素数 A,B:演算子
になります。先ほどの内積の式と組み合わせると、
(ψ,Aφ)*=(At ψ,φ)*=(φ,At ψ)
という関係式ができます。
δ関数は
δ(x)= ∞ (x=0) 0 (x≠0) ∫-∞∞δ(x)dx=1
で定義されています。
このようにδ(x)そのものは意味がないのに積分して初めて意味を持つ関数です。
このような特殊な関数を超関数といいます。
問題 ∫dxf(x)δ(x-x0)を解け 解答 x≠x0ではδ(x-x0)=0なので積分しても0になる。 よってx=x0での積分を考えればいい 答え:f(x0)
Aψ=aψ
このとき、aを演算子Aの固有値、ψをこの固有値に属す固有関数といいます。
簡単な例は
h∂ ekix=pekix i∂x ただし、p=hk
量子力学でよく用いる代数にLie代数というものがあります。
Lie代数をLx,Ly,Lzとすると、
[Lx,Ly]=iLz [Ly,Lz]=iLx [Lz,Lx]=iLy
という関係があります。
ψ(r,t)は波動関数でよく用いられています。 ψは線形性を持っています。
ψ(r,t) だと「確率振幅」 |ψ(r,t)|2 だと「確率密度」
といわれています。一般に後者を多用します。例えば、
ψ(r,t)dt
とかくと、これは区間dxに粒子の存在する確率を意味します。
∫(−∞→∞)|ψ|2 dx=1
という関係式が成り立ちます。
これを成り立たせるようにすることを 規格化といいます。
ψnlm
波動関数は3つの量子状態n,l,mによって決まります。
この3つの状態とは、nがエネルギー、lがスピン、mが磁気モーメントで
とびとびの値をとるため整数値が入ります。
しかも、お互いに影響をします。
基本的に、φはψと似ています。
ψは、区間dxに粒子の存在する確率を説いているのですが、
φは、運動量がdpである粒子の存在する確率を意味しています。
ただ、本によってφの定義がまちまちなので、あまりφを使うことはありません。
ψ(またはφ)の解が複数求まった場合、微分のときのように
それらを定数倍しても、お互いにたしても解になっています。(線形性)
Sch.はシュレディンガー、eg.は方程式の略です。
この方程式は、「剛体・波動」の波動方程式を変形させるとできます。
式は次の通りです。
ih∂ψ(r,t) =H ψ(r,t) ψ:波動関数 ∂t
H= p2 + V(r) V(r):ポテンシャル 2m =−h2 ∇2 + V(r) 2m
上が解析力学で用いたハミルトニアン、下が量子化したハミルトニアンです。
Hは、ハミルトニアンというものです。
「解析力学」で登場したものと少し違い、変数を置き換える必要があります。
pという演算子を次のように変換します。
p → −ih∇
この変換を「量子化」といいます。
このようにすれば、古典力学で用いたハミルトニアンを量子力学でも使えます。
定常状態では、
Hψ(r,t)=Eψ(r,t)
が、成り立ちます。
但し、Hは量子化したハミルトニアン、Eは波動関数ψに対応した固有値です。
問題 ポテンシャルV= 0 (|x|>a) −V0 (|x|<a) であるような粒子の状態を示せ(但し、−V0<E<0) 解説 これは、井戸の中に落ちたボールが動いているようなものです。 周りは地面なのでV=0ですが、井戸の中は掘ってあるので ポテンシャルは−V0になります。 古典的に考えると粒子は|x|<a(つまり井戸の中)に 存在するはずですが、量子の世界で違います。 解答 E=−h2 K2 (|x|>a) 2m E+Vo=−h2 Ko2 (|x|<a) 2m とおくと d2ψ = Ko2ψ dx2 d2ψ = Ko2ψ dx2 と式が簡単になります。 これを解くと ψ=Bexp(Ko x) x<−a ψ=Bexp(-Ko x) x>a ψ=Acos(Kx) |x|<a 又はAsin(Kx) 但し、x=±aにおいておのおのの式が つながっている必要があります。 この結果は |x|<aにおいては定常状態になって |x|>aにおいては少しだけ壁ににじむ現象(トンネル効果) が、おきます。
物体の位置と運動量はある精度以上に確定できないというのが不確定性原理です。
凾・凾吹h
問題 1gの物体を100m/sで投げた。 そのときの速度が3%の不確定さがあるとき最小の位置の不確定さを求めよ 解答 凾≧h=h凾吹@m 凾 =6.6×10-34=2.2×10-31 10-3×3
量子力学や、相対論を考えるとき、次の公式は非常によく使います。
E2=m2c4 + p2c2
p:運動量 m:質量 E:エネルギー
もし、P=0ならば、(静止状態のエネルギー)
E=mc2
という、超有名なエネルギー変換公式になります。
また、質量がない光子の場合、m=0なので
E=pc
と、いうのもよく使います。これは、最初の方の「エネルギー」でやりました。
昔、運動エネルギーは 1/2mv2 と習ったと思いますが、
それはエネルギーEからmc2を引いたものです。つまり、
E=T+mc2 T:運動エネルギー m:静止質量 T=E−mc2≒ 1mv2 2