1,静止流体 | 連続体とは 力 考え方 流線 渦度 流れ関数 流体の種類 |
2,完全流体 | オイラーの運動方程式 ベルヌーイ 圧力 流線曲率 |
3,ひずみと応力 | ひずみ 応力 ニュートン流体での応力 つり合いの式 |
4,非圧縮性流体の力学 | N−S方程式 連続の式 運動量の流れ レイノルズ・ストルーハル |
連続体は、気体や弾性体、粘性体のように変形するものを取り扱います。
微少体積の部分も扱うのですが、分子のレベルまでは行きません。
せいぜい1μm程度です。これを解くには、次の3つの方程式を使います。
・基礎方程式
・運動の法則
・構成方程式
第2式と3式は非線形なため、caos的な現象があります。
流体に働く力は、次の体積力と面積力とのつり合いで表すことができます。
物体の体積に比例して働く力です。
具体的な例として浮力などです。
F=ρK凾u ρ:密度 K:単位質量あたりの外力 凾u:微少体積
これは圧力pを使っても表せます。
F=−∇p凾u
物体の面積に比例して働く力です。
具体的な例として気圧・水圧などです。
F=P凾r P:圧力 凾r:微少面積
以上の式をイコールで結ぶことによってつり合いの式ができます。
ρK = ∇P
流体を考えるには、次の2通りがあります。
これは、1つの粒子をどこからどのように移動していくかを追跡する方法です。
これは、粒子が1023もあると追跡するのがほとんど不可能です。
これは、特定の場所の粒子の数を観測する方法です。
流体ではこちらの方法を多用します。
物体の位置を(x,y,z)
速度を v=(u,v,ω) であたえます。
物理量(位置,速度,圧力など)をFであらわすと
凾e=/∂ + v・∇\ F 凾煤@\∂t /
これを物質微分(ラグランジュ微分)といいます。
流線とは、時間の各瞬間ごとの流れの接線ベクトルのことです。
今、(x,y,z)軸方向の速度を(u,v,ω)とすると、
dx=dy=dz u v ω
という微分方程式が成り立ちます。
先ほどの速度:(u,v,ω)=v とすると、
ω=rot v
と、あらわせます。
2次元流で(1つの軸方向の流れがない)、非圧縮流体のとき
∂u+∂v=0 ∂x ∂y
という関係があります。ここで流れ関数を定義すると次のようにも書けます。
u=∂ψ v=−∂ψ ∂y ∂x とすると dψ=udy−vdx
このψを流れ関数といいます。また渦度は
ω= /∂2ψ + ∂2ψ\ \∂x2 ∂y2/
となります。
流体を物理的に解くには、粘性、圧縮などを考えなくてはならず難解です。
そこで流体を近似して式を解こうとしました。以下は流体の名称です。
静止した流体のことです。
静止しているため力学的なエネルギーは体積力、面積力、ポテンシャルなどしかなく
粘性による影響、摩擦などがありません。
完全流体とは、粘性が0の流体のことです。
粘性が0なので流れに平行な面には摩擦がありません。
流体の密度が時間、場所によらず一定な流体のことです。
流体の密度が時間、場所によって変化する流体のことです。
圧縮性流体の一種です。ただ、密度が式で表すことができ、
ρ=f(p) p:圧力 ρ:流体の密度
このように流体の密度が圧力pのみによって決まるものです。
速度勾配が一定な流体です。従って、速度をuとすると
du=const dx
になります。管の中に流体があると壁付近では速度は0なのですが
壁からの距離に比例して流速が早くなります。
完全流体とは、粘性が0の流体のことです。
完全流体とは粘性がないため、速さの違う2つの流体が接していても
お互いに力を及ぼしあうことがありません。(進行方向に対して)
オイラーの運動方程式は完全流体に対する運動方程式で、「つり合いの式」と
F=maという関係を用いています。
Dv=−1∇p + K Dt ρ
ここで、pは圧力、vは流体の速度、Dは微分の記号です。
なぜ、dという微分記号を用いないのかというと、数学的に
正しい微分ではないからです。
H=1v2 + P + Ω Ω:ポテンシャル P:圧力関数 2 P=∫dp/ρ
このHをベルヌーイ関数といいます。
実は、右辺に質量mをかけると「エネルギー保存の式」になっています。
定常な流体はHを一定に保つような流れをします。(ベルヌーイの定理)
流線の分岐というのはあり得ません。従って分岐しているというのは
速度が0であるといえます。その点のことは「よどみ点」といいます。
これは、流体が静止物体にあたりよけるときに発生します。
よどみ点にかかる圧力を総圧、元々ある圧力を静圧、流れによって発生する圧力を
動圧といって以下の関係があります。
p + 1ρv2 =po 2
左辺第1項が静圧、2項が動圧、右辺が総圧です。
流線が曲がっているときには、以下の関係があります。
1∂q2=−1∂p 2∂s ρ∂s ρq2=−∂p R ∂n
これらの式を流線曲率の定理といいます。
ここで、qは流線の速度、ρは流体の密度 また、流れに水平な成分をs,垂直な成分をnとしています。
Rは流体の流れを円に近似したときの半径です。
そのことから、急な円であるほど圧力が減少します。これを応用したのが飛行機です。
飛行機は、下の方は水平になっています。しかし、上の方は
丸みを帯びています。これは円に近似できるので、先ほどの定理から
圧力が減少します。従って飛ぶのです。
微小な粒子が流れるとき3つの変形をしています。それは、
この3つがあります。このとき変位をsで表すとテーラー展開できて、
si=sio+/∂si\xj + ・・・ (i,j∈1,2,3) \∂xj/
この右辺第2項の微分部分はテンソルで表示できます。
テンソルは、対象テンソルと非対称テンソルに分解できます。
/ε11 ε12 ε13\ εij=1/∂si+∂sj\ | ε12 ε22 ε23 | 2\∂xj ∂xi/ \ε13 ε23 ε33/ εij:主ひずみ / 0 φ12 φ13\ φij=1/∂si−∂sj\ | −φ12 0 φ23 | 2\∂xj ∂xi/ \−φ13 −φ23 0 /
主ひずみは座標変換によって
/ε1 0 0\ | 0 ε2 0 | \0 0 ε3/
さらにトレースは座標変換に対し不変なので
ε1+ε2+ε3=ε11+ε22+ε33=div s
になります。このdiv sは凾u/Vに等しく、「体積ひずみ」といいます。
応力とは、単位面積当たりにかかる力のことです。
/T1\ /τ11 τ12 τ13\ /n1\ | T2 |=| τ21 τ22 τ23 || n2 | \T3/ \τ31 τ32 τ33/ \n3/
であらわします。ここで、τiiは「法線応力」、τij(i≠j)は「接線応力」といいます。
これも、座標変換によって対角形にできます。
/τ1 0 0\ | 0 τ2 0 | \0 0 τ3/
非圧縮性流体中では、応力テンソルは次のように求まります。
τij=(−p + κ div v)δij + 2ηeij ただし、 eij=∂εij κ:物質定数 ∂t
ニュートン流体中では
τxy=ηdu u:x方向の速度 dy
ニュートン流体では以下の応力テンソルが成り立っています。(非圧縮流体で)
/τ11 τ12 τ13\ /−p+2ηe11 2ηe12 2ηe13 \ | τ21 τ22 τ23 |=| 2ηe21 −p+2ηe22 2ηe23 | \τ31 τ32 τ33/ \ 2ηe31 2ηe32 −p+2ηe33/ η:粘性率 eij:単位ベクトル(i方向の面がj方向に押される力)
以下に粘性率の値を示します。
物体 | 粘性率 |
空気(20度) | 1.81×10-5 |
空気(0度) | 1.71×10-5 |
水(20度) | 1.00×10-3 |
水(0度) | 1.79×10-3 |
これから、温度によって粘性率が変わることがわかります。
以前、つり合いの式
ρK = ∇P
というのを紹介しましたが応力τを使ってもこの式を表せます。
∂τij + ρKi=0 ∂xj
符号が逆になっていますがこれは、圧力ベクトルpは物体から見ると
反対に力を受けるためです。
非圧縮性流体とは密度が常に一定の流体のことです。
ナビエーストークス方程式を略してN−S方程式といいます。
以下は、非圧縮性流体の運動方程式です。
∂v+(v・∇)v=−1∇p+ν凾磨{K ∂t ρ ρ:密度 K:体積力 ν:運動粘性率 ν=η η:(静止)粘性率 ρ
左辺第1項は非定常項、第2項は移流項、右辺第1項は圧力項、第2項は粘性項です。
左辺をまとめて慣性項といったりもします。
これは、オイラーの方程式
Dv=−1∇p + K Dt ρ
を拡張したものです。
単位体積あたりの力Kは、修正圧力p*を
p*=p+ρΩ ρ:密度 Ω:ポテンシャル
と定義し、N−S方程式に代入すると体積力Kが省略できます。
粘性率は、静止しているときと動いているときでは以下のように違ってきます。
物体 | (静止)粘性率 | 運動粘性率 |
空気 | 1.81×10-5 | 1.50×10-5 |
水 | 1.00×10-3 | 1.00×10-6 |
グリセリン | 1.50 | 1.18×10-3 |
また、
Re=(移流項) St=(非定常項) (粘性項) (移流項)
と定義して、Reは「レイノルズ数」、Stは「ストルーハル数」といいます。
Reは、大きければ粘性が少ないことを意味します。
Stは流体の時間依存性を意味し、定常流の時はSt=0になります。
流体はわき出したり消滅するといったことがありません。
つまり、連続である必要があります。そこで次の式が成り立ちます。
∂ρ+div(ρv)=0 ∂t
これが「連続の式」というものです。
非圧縮性流体の問題は、連続の式とN−S方程式を連立させて解きます。
流体中に領域Vをとります。Vが受ける力は面積力、体積力
そして単位時間に流入する運動量です。
微少面積dSを通して流入する運動量はGdSです。Gは
G=pn + ρvvn
Gは「運動量の流れ密度」といいます。これは、運動量と同じようなものです。
H=x × G
Hは「角運動量の流れ密度」です。
長さ、時間、速度の単位を持つものとしてL,T,Uを選んだとき
Re=UL ν:粘性率 ν St= L UT
このようにレイノルズ数Reと、ストルーハル数Stが定義できます。
Reの単位の次元として
Re∝ (移流項) (粘性項)
Stの単位の次元として
St∝ (非定常項) (移流項)