1,熱力学の第1法則 | 状態方程式 ファンデルワールス 熱力学第1法則 変分 断熱変化 |
2,熱力学の第2法則 | クラウジウスの不等式熱力学第2法則 ヘルムホルツ ギブス 化学ポテンシャル |
3,分子運動論 | 分布関数 速度 比熱 エルゴード仮説 配置数 エネルギー 正準集団 |
P:圧力 V:体積 PV=nRT n:分子の数 T:温度
ここで注意してほしいのは、化学の気体に関する方程式と似ているのですが単位が違うということです。
例えばPですが、化学ではP [atm]といいました。
ところが物理では、P [N/m2]という単位になります。
以下にその違いをまとめてみました。
物理 | 化学 | |
P(圧力) | N/m2 | atm |
n(量) | mol | mol |
T(温度) | K | K |
R(気体定数) | 8.31 | 0.082 |
この式は、理想気体に成り立ちます。
理想気体とは、気体分子の体積が0で、分子同士の相互作用がないものです。
ここで、ボルツマン定数を
kB= R NA
と定義すると、気体の状態方程式は
PV=N kB T
ここで、Nは気体の分子の数です。
先ほどの式は実際の気体と多少違ってきます。それは実際には、分子間の相互作用があり
気体分子の大きさがあるからです。これらの因子を取り入れたのが次の式です。
/P + a n2\(V−nb)=nRT \ V2 /
ここで、P,V,T,R,nは、先ほどの通りです。a,bは定数で、物質ごとに決まっています。
この式は非常によくできていて、気体だけではなく液体にも適用できます。
この式を、ファンデルワールスの式といいます。
この式を解くと、以下のようなくびれができます。(できないときもあります。)
式からは図の曲線のように導かれますが、実際は図の紫と水色の面積が同じになるように
水平線を入れます。この区間の温度変化は水平になります。
このとき、液体と気体の変化がおきます。
dU=−pdV + d’Q U:内部エネルギー Q:熱量
これが、熱力学第1法則です。d’Qは、数学的には微分はできないので「’(プライム)」
をつけます。以下の式はよく使う式を示しました。(こんなもんだなと思って見てください。)
U=U(T,V) なので dU=/∂U\ + /∂U\ \∂T/V \∂V/T d’Q=/∂U\ dT+/p+/∂U\ \dV −−−−−−@ \∂T/V \ \∂V/T/ 比熱Cv=/∂U\ \∂T/V @から定圧比熱を考える。 全体をdTでわると /∂U\ + /p+/∂U\ \ /∂V\ =d’Q = Cp \∂T/V \ \∂V/T/ \∂T/p d T /∂U\ は定積比熱CVを表しています。また、理想気体では、 \∂T/V /∂U\ =0 になっているので \∂V/T pV=RTという関係から Cp=Cv + p/∂V\ =Cv + R \∂T/p
最後の式は、「マイヤーの関係」といいます。
熱統計では変分を多用します。
圧力pがTとVの関数であるということから最後の式のようなきれいな形になります。
p=p(T,V)より dp=/∂p\dT + /∂p\dV \∂T/V \∂T/T pが一定の時dp=0、そして全体をdTで割ると /∂p\ + /∂p\ /dV\ =0 −−−−−−@ \∂T/V \∂V/T\dT/p さらに /∂p\ /∂T\ =1 −−−−−−A \∂T/V\∂p/V なので @に(∂T/∂p)Vをかけると第1項がAの関係から1になるので /∂T\ /∂p\ /dV\ = −1 −−−−−−B \∂p/V\∂V/T\dT/p
全微分のときは、Aの関係はいえました。変微分の時は何を一定にするのか
というのが重要になります。AはVを一定にしました。
Bは一定にするものがそれぞれの項で異なるので (右辺)=1 ということがありません。
以下は変分で重宝する公式です。ただし、x,y,z,ωは独立変数です。
/∂x\ =/∂y\-1 \∂y/z \∂x/z /∂x\ =/∂x\ /∂ω\ \∂y/z \∂ω/z\∂y/z /∂ \ /∂ω\ =/∂ \ /∂ω\ \∂x/y\∂y/z \∂y/x\∂x/z /∂x\ =−/∂x\ /∂z\ \∂y/z \∂z/y\∂y/x /∂ω\ =/∂ω\ +/∂ω\ /∂z\ \∂y/x \∂y/z \∂z/y\∂y/x
上から2番目の式を「chain rule」、3番目を「Maxwell rule」といいます。
B式は実は4番目の式だということがわかります。
/∂U\ + /p+/∂U\ \ /∂V\ =0 (∵断熱変化よりd’Q=0) \∂T/V \ \∂V/T/ \∂T/p 理想気体を想定して、Cvを導入し、(∂U/∂V)T=0 とすると Cv dT + p dV =0 1molについて考え、pV=RTを導入し、全体をTで割ると Cv dT + R dV =0 T V R=Cp−Cv γ=Cp/Cv より dT + (γ−1)dV = 0 これを積分すると T V T Vγ-1=const pVγ=const
という式が求まります。γは物質ごとのCv、Cpで決まります。
単原子のときはγ=5/3、2原子分子のときはγ=7/5になります。
状態変数Sは
d’Q=dS T
で定義されています。しかしこれは、可逆変化の場合です。
不可逆変化の場合、あるサイクルをしても同じ状態に戻りません。
このときの式は
d’Q<dS T
になります。
熱力学第2法則は、不可逆過程について述べています。
これは、低温熱源から高温熱源に熱が移動しないといったことです。
ここで、状態変数Sというのがあります。
d’Q=T dS dU=−p dV + d’Q 以上から dU=−p dV + T dS dS=pdV + dU T T =nRdV + nCvdT 積分すると V T
S=nCv lnT + nR lnV + So
このように表せます。Sはエントロピーともいいます。
不可逆過程では、あるサイクルでも、エントロピーが増大します。
これを「エントロピー増大の法則」といいます。
ヘルムホルツは次のような熱力学関数を定義しました。
F=U−TS
これは、独立変数をT,Vにしているので、T,Vがわかっているときに便利です。
dF=−S dT−p dV これより S=−/∂F\ \∂T/V p=−/∂F\ \∂V/T 以上の2式から /∂S\ =/∂p\ \∂V/T \∂T/V
最後の式を「マクスウェルの関係式」といいます。
TdS≧d’Q dU=−pdV + d’Q 以上の関係から T dS−dU−p dV≧0 p,Vが一定のときは d(TS−U)≧0 dF≦0
これより、平衡の条件はT,Vが一定のとき、Fが極小のときです。
ギブスは次のような熱力学関数を定義しました。
G=U−TS+pV
これは、独立変数をT,Pにしているので、T,pがわかっているときに便利です。
dG=−S dT+V dp これより S=−/∂G\ \∂T/p V=/∂G\ \∂p/T 以上の2式から /∂S\ =−/∂V\ \∂p/T \∂T/p
最後の式も「マクスウェルの関係式」といいます。
先ほどと同じ式から
T dS−dU−p dV≧0 p,Tが一定のときは d(TS−U−pV)≧0 dG≦0
平衡の条件は、T,pが一定のとき、Gが極小のときです。
これは、1粒子にもエネルギーが存在するといったものです。
dU=−pdV + TdS + 買ハj dNj
μは次のようにして求まります。
μj=−T/∂S \ =/∂F \ =/∂G \ \∂Nj/U,V,(Nj) \∂Nj/T,V,(Nj) \∂Nj/T,p,(Nj)
ここで(Nj)というのはNj成分以外を一定にするというものです。
熱統計の世界で重要なのは次の式です。
f(v)dv=N/ m \3/2 exp(−mv2/2kBT)dv \2πkBT/
これは、速度がvからv+dvに存在する粒子の数です。
全体をNで割れば1粒子がv〜v+dvに存在する確率になります。
kBは「ボルツマン定数」というものです。
exp(−ε/kBT) ε=mv2/2 =exp(−εβ) β=1/kBT
は、「ボルツマン因子」というもので、先ほどの式にもこの因子があります。
気体分子の速度は次のように求まります。
<vp>= 2 Γ/p+3\ /2kBT\ π1/2 \ 2 / \ m /
<vp>は速度がvpの速度の平均値です。
例えば、v2の平均値はp=2とすればいいのです。
Γはガンマ関数というもので、次のような性質があります。
Γ(s+1)=sΓ(s) Γ(n)=(n−1)! Γ(1/2)=(π)1/2
エネルギーは1自由度があるたびに1分子あたりkBT/2だけ増えます。
従って、自由度がfだけあると1molあたり
U=fRT R:気体定数 2 Cv=fR f:自由度 2 Cp=(f+2)R 2 γ=f+2 f
例えば、単原子分子のときは、自由度はx,y,z方向があるので自由度f=3です。
2原子分子では、このほかに回転と分子間の振動があるのでf=5になります。
気体粒子は1分子について考えると位置ベクトルrと運動量ベクトルpであらわせる
位相空間内を時計回りに楕円運動していると考えられます。
もし、N個の分子を考えると2N次元の位相空間に1点(代表点)があり
これですべての分子の運動を決定できます。
このような空間を「Γ(ガンマ)空間」といいます。
実際には、分子間のエネルギーのやりとりが微少ながらあるので1分子の
位相空間での運動はいびつな楕円運動になります。
そこで、全体のエネルギーがE〜E+凾dの中にあるとします。
(但し、凾dはEと比べて十分小さい)
このような粒子を「小正準集団」といいます。
位相空間を微少なセルで区切る場合を考えます。
このセルの面積はdxdpで表せます。ただし、あまりにも小さくとることはできず
dx dp>h
でなければなりません。これは、量子力学の不確定性原理があるためです。
こうしてできたセルに入っている粒子の数をn1,n2,n3,・・・とすると
粒子が入れる場合の数Wは
W= N! n1! n2! n3!・・・
できまります。自然界では粒子がとり得る場合の数を大きくしようとする
性質があります。(これをエントロピーの増大の法則といいます。)
これから、エントロピーがわかって
S=kBlnW kB:ボルツマン定数 W:配置数
ln W!でWが非常に大きいとき、次のような近似ができます。
ln W!≒W(ln W−1)
これは、熱統計では非常に有名です。 これを先ほどの配置数に応用すると
lnW=lnN!−狽撃 ni!
になります。lnWが最大のときはWも最大になります。
エネルギーの平均値は次のようにして求めることができます。
<e>=∫e exp(−βe)drdp ∫ exp(−βe)drdp = 3 =3kBT この式は1粒子の場合です。 2β 2
このようにして求まります。分子の項は全体のエネルギーに比例します。
分母は規格化のためです。
1自由度あたりの平均エネルギーを求めると
<e>=∫e exp(−βe)dxdpx ∫ exp(−βe)dxdpx = 1 =kBT 2β 2
でもとまります。
位相空間でいくつかのセルがあります。
これらの間にはエネルギーの交換があるのですが外部からのエネルギーのやりとりがありません。
このような粒子の集団を「正準集団」といいます。
これは、粒子数N、体積V、温度Tが指定され平衡になっています。
これは、セル間でエネルギーの交換だけではなく粒子も交換可能な系を
考えます。これを大正準集団といいます。
化学ポテンシャルμ、体積V、温度Tが指定され平衡になっています。
これは、セル間のエネルギーの交換が全エネルギーと比べて十分小さい場合を仮定します。
これを、小正準集団といいます。
粒子数N、体積V、エネルギーEが指定され平衡になっています。
以上から指定される変数を一覧にしてみました。
集団名 | 粒子数 | 体積 | エネルギー | 温度 | 化学ポテンシャル |
正準集団 | N | V | T | ||
小正準集団 | N | V | E | ||
大準集団 | V | T | μ |