タイトル

物性ゼミ5

タイトル

1,電子の運動 電子の散乱
2,超伝導 現象 クーパー対 BCS理論 超伝導電流 第U種超伝導体

葉

1,電子の運動

電気伝導や熱伝導は、電子の運動で説明することができます。

電子の散乱

電子散乱の要因は

  1. 格子欠陥(不純物も含む)
  2. 格子振動(熱による)
  3. 電子同士の相互作用

の3つが考えられます。ここでは、電子同士による散乱について考えます。

電子の散乱ここでは、金属の場合を考ます。
フェルミ温度は数万kになるので、常温でもT=0とおなじく
電子はフェルミ球にぎっしり詰まっていると考えられます。
ここに外部から電子(1)がやってきて、フェルミ球内部の電子(2)と
相互作用を起こして、それぞれ電子(3)と電子(4)に散乱される過程を考えます。
散乱後の電子はパウリの原理より空席になってないと行けないので
フェルミ球の外側になります。
ここでそれぞれの状態 i(1〜4)をEiであらわすと

1,E3,E4>EF

2<EF

という関係のほかに、運動量保存の法則により

1+k2=k3+k4

という関係もあるので、(1)から(3)への変化と(2)から(4)の変化は
互いに等距離で反平行である必要があります。
これらの条件から図のような散乱になるわけです。

葉

上上へ

葉

2,超伝導

現象

超伝導状態の特徴的な現象は、つぎの2つです。

1、電気抵抗が0

2、マイスナー効果

1の「電気抵抗が0」というのは、よく知られていることです。
超伝導状態の抵抗値は、現在の技術で測定できる最小の
抵抗値よりも小さく、ループ状に電流を流しても数百億年は
電流値は変わらないといわれています。

誘導電流2のマイスナー効果というのは、磁場を完全にはじいてしまうという
現象です。磁場中に超伝導物質を入れると超伝導物質の表面に
電流が流れて、磁場が内部に侵入するのを防ぎます。
(実際に電流は、表面から1μm程内側の間を流れるので
磁場も1μmのオーダーで侵入します。)

超伝導と完全導体の違いよく、超伝導状態と完全導体を混同することが
あります。両者とも、電気抵抗が0になり
磁場を与えても誘導電流が発生して、
磁場が内部に侵入できません。

しかし、磁場がある状態で物質を温度を
Tc以下にすると、完全導体になった場合は
内部に磁場が通ったままですが、超伝導状態
になった場合は磁場を完全にはじいてしまいます。
さらに外部磁場を取り去った場合、超伝導状態では
磁場がなくなってしまいますが、完全導体では
誘導電流が流れつづけるので自発磁荷が生じます。

つまり、マイスナー効果とは

∂B=0
∂t

なのではなく

B=0

ということです。

ボーダー

クーパー対の原理クーパ−対

超伝導状態になった物質の電子は、単独では運動せずに
2つの電子が対になってクーパー対というものを作ります。
この2電子間には電気的な相互作用があります。
では、この電気的な相互作用について説明します。

図の上のように格子面に沿って電子が運動します。
電子は負の電荷を持っているので格子面は電子によってきます。
しかし、電子の運動の速さに対して格子面の変形の速度は
非常に遅いので、「電子1」がはるか遠方に行ったときに
変形が完了します。変形した部分は電気的に正になります。
そこに「電子2」が引き付けられます。
「電子2」が去った後は何の影響も残らずに
元の格子面に戻ります。

このようにして、格子面を介して2電子が引きつけ合うわけです。

ボーダー

BCS理論

金属は、常温では自由電子のFermi海というものをつくり
安定した状態になっています。しかし、金属を冷やして
超伝導状態になると電子は「クーパー対」というものをつくります。
こうなると、「自由電子のFermi海」のままでは不安定になり
より安定した「BCS基底状態」に落ち着きます。

エネルギー今、フォノンの最大エネルギーを(=(T))とおきます。
常伝導状態ではフェルミエネルギーEFを
境として下には電子がつまっていて
上はほとんど電子化ありません。
ところが超伝導状態になるとEFを中心に
凾フ幅の禁止帯ができます。
この間にあった電子は、互いにクーパー対を作って
もっと下のエネルギー順位に移動してしまうため
エネルギーギャップができてしまうわけです。
T=0では、すべての電子はフェルミ海に収まりますが、
温度が有限でT<Tcの範囲のときは、励起された電子が
エネルギーギャップを飛び越えて上のエネルギー順位を占めます。

また、温度が上がっていきにつれて、凾フ大きさも小さくなります。
そして、T=Tcになると、凵0になってエネルギーギャップが消失します。
このため、通常の常伝導体になるわけです。

◆BCS理論の実際

超伝導状態になったときにできるエネルギーギャップは数meV程度です。
このエネルギーはマイクロ波に相当します。

まず、エネルギーギャップよりもエネルギーの小さいマイクロ波を当てると
クーパー対はエネルギーを吸収してもエネルギーギャップを超えることが
できないので吸収できません。
よって、マイクロ波は完全に反射されます。

逆に、エネルギーギャップよりも大きなエネルギーを持ったマイクロ波を
当てると、クーパー対はエネルギーを吸収してエネルギーギャップを
飛び越えることができるので、マイクロ波の吸収が起きます。

このように、実験的にもBCS理論が確認されています。

ボーダー

超伝導電流

超伝導状態の特徴である「抵抗0」にもクーパー対が関係します。
いま、超伝導体内部に電流が流れていて、系全体の波数がKだけ
変化したと仮定します。すると

クーパー対の変化

へと変化します。しかし、波動関数の確率密度は変わらず
波動関数の位相を変えるだけです。
また、クーパー対内部の引力相互作用も相対的なものなので
電流が流れていないときと変わりません。

●クーパー対の崩壊

しかし、電流が大き過ぎると、クーパー対の片方がエネルギーギャップ2Δを
越えてしまいます。このときにクーパー対によるエネルギーの利益は
失われるのでクーパー対は崩壊し、超伝導状態から常伝導状態になります。
このときの電流密度 jcを臨界電流といいます。
Snに対する実測値では、T→0[K]でjc=2×107[A/cm2]程度です。

臨界電流と臨界磁場いま、有限の太さの超伝導体を仮定します。
内部にはこちら向きに電流が流れています。
実際の電流は、「ロンドンの侵入度」で示された
表面近くを流れ表面ほど大きな電流が流れています。
この電流が大きいと表面では臨界電流を
越えてしまうことがあります。

このとき、臨界電流が流れている内部は超伝導状態に
なり、外部は常伝導状態になります。
また、Maxwellの方程式から磁場が発生するのですが
この臨界電流が流れている付近の磁場を
臨界磁場といいます。

超伝導体はこの臨界電流や臨界磁場を越えてしまうと
クーパー対が崩壊して常伝導状態になります。
これらに関係するのがエネルギーギャップΔですが
これは温度に依存します。
ΔはT=0でもっとも大きく、臨界温度Tcで0になります。
臨界電流や臨界磁場もこれに従い、T=Tcで0になります。

ボーダー

第U種超伝導体

第U種超伝導体いま、図のように周りが常伝導体で、薄膜部分が
超伝導体になっている物質を仮定します。

ここに臨界磁場Bcをかけると、超伝導体内部にも
磁場が侵入します(赤色の曲線)
しかし、薄膜があまりにも小さいと磁場は超伝導体内部で
さほど変化しなくなります。
このような構造をとると、強い磁場に対しても超伝導状態の部分が
残ることができます。
第2種超伝導体では、強磁場の時にこのように常伝導体のなかに
超伝導体がゲリラ的に存在するのです。

●磁荷

外部磁場と磁化の関係第1種超伝導体と第2種超伝導体の外部磁場と磁化の関係は
図のようになります。

第1種超伝導体では、臨界温度Tcまでは外部磁場に比例して
臨界磁場を越えたとたんに0になります。

しかし、第2種超伝導体では、磁場がBc1に達するまでは
第1種と同じ超伝導体ですが、Bc1を越えてBc2に達する
までは超伝導体と常伝導体が共存します。
(このときをシュブニコフ相といいます。)
そしてBc2を越えると完全に常伝導体になります。

このBc2はBcと比べて非常に大きい(10倍程度)ので
超電導磁石(SCM)などに応用されています。

葉

上上へ

戻るTopに戻る