1,原理 |
2,装置 |
3,方法 |
4,結果 |
5,考察・まとめ |
この実験では透過率というものを求めます。透過率とは
透過率 = 試料を通った光の強さ なにもないときの光の強さ
このように求まります。
実際の実験では、薄い試料だけを空中に浮かすことはできないので
透明度の高い石英ガラスの上に蒸着させます。
このため、参照光の測定でもなにも蒸着させていない石英ガラスを用意します。
(参照光とは、試料がないときの光です。)
この装置の原理は、次のようになっています。
まず、装置の左から光を入れます。
装置の前にはフィルターをつけます。
分光器内には、光を単色に変えるために1200本/mmの格子を用います。
ここに光を入射させるとBlag散乱の原理により
角度によって任意の単色の光を取り出せます。
しかし、目的の波長の(1/整数)の光も一緒にでてきてしまうので
フィルターをつけるわけです。
分光器を通った光は測定箱に入ります。
測定箱には試料を蒸着させた石英ガラスと、なにも蒸着させていない
石英ガラスを用意します。
これを通った光の強度を、光電子倍増管で電流値に変えて測定するわけです。
透過率は、(試料を通った光の強さ)/(なにもない石英ガラスを通った光の強さ)
でもとまります。
ランプは、どの波長の光も出しているわけではありません。
この実験では200nm〜1000nmまで測定するので
380nm〜900nmまでだせるWランプ(ふつうの電球)と
200nm〜380nmまでだせるD2ランプ(重水素放電管)を使います。
また、測定する波長にあわせてフィルターも交換します。
本実験では次のようにしました。
測定範囲(nm) | ランプ(波長) | フィルター(波長) |
200〜400 | D2 (200〜380) | なし (200〜380) |
300〜500 | D2 (200〜380) | UV39(380〜700) |
300〜800 | W (380〜900) | UV39(380〜700) |
600〜1000 | W (380〜900) | VR69(700〜900) |
これらのデータをうまくつなげてみると以下のようになります。
これらのグラフで透過率が激しく変化している部分がありますが
これは、光が弱すぎたために有効数値が小さくなり、おかしなものになっています。
これら4つのデータから安定している部分を切り出して組み合わせれば
真の透過率が求まります。
このグラフから、500〜550nmを境としてこれより波長の短くて高エネルギーの光子を
吸収していることがわかりました。なお、540nmでは2.3eVの
光子エネルギーがあります。
今回使用したサファイアは色が薄かったため、はっきりとした特徴がでていませんでした。
なお385nm付近での落ち込みは、うまくつながらなかったためで
サファイアによるものではありません。
このグラフからわずかですが300〜500nmで透過率が大きくなっています。
これがサファイアの青色に関係します。(ただし、わずかしか青くありません。)
240nm(5.2eV),410nm(3.0eV),480nm(2.6eV),560nm(2.2eV),700nm(1.8eV)
の5カ所で大小の落ち込みがあります。これからルビーが
このようなエネルギーバンドを持っていることがわかります。
なお、ルビーとはAl2O3が主成分で無色です。
この中にわずかにCr2O3が含まれています。
これがルビーの青紫色の原因です。
この色はCr(クロム)電子の3d軌道の電子が励起することによります。
ただし、5.2eVは大きく励起して隣のO原子の電子と反応しています。
サファイアはルビーとかなり似ています。違うのはCr2O3の代わりに
Fe2O3やTi2O3で置換したものです。
今回は260nm(4.8eV),320〜360nm(3.4〜3.9eV),590nm(2.1eV)で吸収が起きているように見えました。
これも、Feの3d軌道にある5個の電子がd殻内で励起するためです。
ただし、4.8eVの吸収は隣のO原子との反応だと思われます。
これはいまの2つと違って500nm以下で連続した吸収がみられ、550nm以上では透過しました。
これは、ルビー,サファイアでみられた正8面体構造をとらないため550nm以上(2.2eV以下)
のエネルギーバンドがないためだと思われます。