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「NMR」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
これは「核磁気共鳴」というもので、物質中の原子核の状態を
調べることができます。
それに対して「ESR」は「電子スピン共鳴」というもので
電子のスピンの状態を調べることができます。
両者とも原理的には同じで、測定する周波数が違うだけです。
この「ESR」の原理ですが、スピンを持った電子に磁場を与えると
エネルギーが2つに分かれます。
この現象を「ゼーマン効果」といいます。
このとき、エネルギー差が図のように2μBHになります。
これと同じだけのエネルギーを外部から与えると「共鳴」が起きます。
ESRでは、外部からのエネルギーに電磁波を使います。
エネルギーはhνで与えられます。このことから
2μBH=hν
が成り立つように磁場Hを調整すればESRがおきるわけです。
(電磁波の周波数νを調整するのは困難なので磁場を調整します。)
ESRをもちいることで、主に次のようなことができます。
NMRもESRも原理は同じです。
実際には、磁場の大きさや電磁波の周波数などが違ってきます。
また、測定できる試料も違ってきます。
ESRの場合、外部から磁場をかけることによって
エネルギーの縮退が解けます。(ゼーマン効果)
しかし、その量子状態に電子が2つすでに存在すると
片方が励起状態になると、もう片方は基底状態に同じに移動します。
これは、パウリの排他律のためです。
したがって、外部には何の影響を与えません。
したがって、ESRで観測できるのは不対電子を持った試料だけです。
実際にESRを測定する場合は、右図のように
試料に対して図の灰色のように外部磁場を
与えます。そのとき、外部磁場に対して
垂直に電磁波を与えられるようにすることで
ESRの測定ができるようになります。
(NMRも同じです。)
ESRでは、電磁波の周波数は一定にしておき、
外部磁場を変えることによって、共鳴周波数を
探すようになっています。
それに対してNMRの場合は、外部磁場を
一定にしておいて電磁波の周波数をかえることで
共鳴周波数を探します。(少なくとも、うちの研究室では)
このような装置からのESRの信号を、積算器に加算、平均化することで
ESRの信号を取り出すことができます。